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エッセイ:私のこと〜なぜ開業を志したのか④教授に伝える〜

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さて、前回は、開業を決め、物件を決定したところまでを話した。

次は医局を辞め、開業する意思を教授、勤務先の病院の部長に伝えなければいけない。

医局にもよると思うが、所属医師にとって、「教授に開業を告げる」というのは、ある意味極道が足を洗うために組長にお願いしに行く、ということに近いかもしれない。

そもそも医局というのは会社と従業員のような労働契約があるわけではなく、志を一にする医師の集まり、という専門職集団にすぎないため、ここに入るのも出るのも法律上の制限があるわけではない。

医局とはなんぞや、については色々な所で論じられているため、ここでは主旨が違うので控える。しかし、ちゃんとした契約を元に雇われているわけではないのに、その強力な権限に従う必要があり辞めにくいと、いう意味で、極道や、ある有名な芸能プロダクションと大きな括りでは変わらない気がしている。

もっとも大学によって医局の力の強さが違うので、必ずしもこういう封建的な医局だけでなく、自由な医局もあると思われるが、当方のような地方都市の医局では、まだまだ医局の力は絶大である。

もちろん辞める時に指を詰めることはないが、この時の礼儀をないがしろにすると、その地域で診療をすることは非常にやりにくくなり、実際教授を怒らせた医師が開業して、その大学病院に紹介できない、ということは時々あることだ。

ということで、どのように開業することを伝えるのか、相当吟味する必要がある。


また、まず教授に言うのか、今の勤務病院の部長に先に言うのか。

どちらに先に伝えるのか。

ここから考えないといけない。

この順序は、教授と、病院の部長の関係性による所が大きい。

どちらか先輩かとか、それぞれの医師の性格などを考える必要がある。

教授より部長の方が先輩である、ということもある。

その場合、部長の方が先輩なので、教授にある程度強い態度を示せるが、人事権は教授が持っているので、教授が機嫌を損ねると、その病院にドキュン医師のみを派遣する、というようなことも可能である。


私は色々考え、細かい話は避けるが、まず教授に言うのが正解だと判断した。

そして、どのように伝えるべきか考えに考えた。


自分で言うのもなんだが、ある程度教授には可愛がられ期待されていた方だと思うし、ゆくゆくは大学でそれなりのポジションに就いてもらいたい、というような話はいただいていた。

しかも通常まだ開業を言い出さない年齢だし、今の時点で私から開業の話が出るなど、教授にとって思いもよらないことだろう。

なので、前もって教授のアポイントを取ってしまうと、頭のいい教授は色々先に可能性を考え、私の開業を遅らせるような策を練ってくるかもしれない。


しかし私の決意は固かった。

教授から何を言われても、激怒し土下座させられて医局を破門となっても飛び出る覚悟だった。


なので、教授室にゲリラ的に訪問し、伝えてしまうことにした。

しかし、医学部教授というのは非常に忙しく、そもそも教授室にいないことも多いし、いてもゆっくり私の話を聞くような余裕がない時間帯も多いだろう。


そこで、仲の良い大学勤務の後輩医師にスパイをお願いし、突撃する日の教授の動向を探ってもらい、随時メールしてもらうこととした。

そして私は大学病院近くに車を止め、そこで後輩の連絡を待っていた。

「今、回診中ですので、今は無理です」

「今、カンファです。」

「今、教授会に出られました」

そして、

「今、教授室に戻られました。しばらく予定はなさそうですので、今がチャンスです!」

私はその一報を聞き、車から飛んで出て、教授室へと走っていった。

その後輩医師には本当に感謝している。決してパワハラではない(と私は思っている(^^;)。

もし教授との話し合いで厳しいことを言われたら、こう主張しよう、など頭の中で色々なパターンを画策していた。土下座も厭わない、そういう覚悟だった。


そして、教授室をノックした。

「どうぞ」

私が入室すると、大学病院ではなく関連病院勤務の私が入ってきたので、少し驚いた様子だった。そして顔がこわばった。

「先生、突然どうしたの?」

「お話があってきました」

そして、開業の意思を伝えた。

10年程度医局に属し、教授の言う通りに歯向かうことなく粛々と人事を受け入れ、それなりにそれぞれの病院で関係を良好に保ってきた私の初めての反抗だった。

「なるほど。。」長い沈黙があった。

「そうか、君がこうやって言いにきたということは、相当覚悟が決まってるということなんだろうね。場所も決まってるの?」

意外な返事だった。

そして私の色々な思いを話す機会をいただいた。

最終的には「やるからには成功しないとね」という言葉までいただいた。

そしていまだに大学とは色々な形で関わらせてもらっており、教授には本当に感謝しかない。


そして、翌日、自分の勤務病院の部長に伝えた。

「よく教授が認めてくれたねえ。残念だけど、教授がいいと言ったのなら私が止める権利はないよ。ちょっと今日夜ご飯でも行くか」

辞めることを伝えた日に、部長と2人だけで食事することになった。

部長と2人だけで食事したのはその病院に就職してから初めてだった。

そして色々な話をした。

お二人の暖かい心遣いに本当に感謝している。


伝える前は相当緊張もしたし、色々なパターンを予想していたが、考えうる中で最もスムーズな形だった。

今思うと、今までできる限りどの先輩にも失礼な態度を取ることなく、仕事も真面目に粛々と従事していたので、ある程度先生方に信頼されていた所はあると思う。

そしてさらに、私の開業へ思いが強いことが伝わったため、今更止めてもだめだろう、こいつがこう言うからには相当の覚悟なのだろう、という風に思われたのだと思う。

よく聞く話に、開業しようと思ったが、教授に止められて数年経つ、などという話がある。

この医局の人手不足の時代、自分に迷いがあれば、そこを突かれて引き留められてしまうだろう。

開業する際は、不退転の覚悟と、それまでの信頼の蓄積、この2つがスムーズにことを運ぶコツなのだろうと思う。


そして、教授に伝えられたあとは、開業に向かって準備していくのみである。

開業を決意してここまで約4ヶ月。

次回につづく。。

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