開業医による、本当に役に立つ医院開業のコツ

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エッセイ:私のこと〜なぜ開業を志したのか⑤開業前後〜

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開業準備

さて、前回は開業に際し、教授に報告に行ったところまでを話しした。

教授の許しを得られた後は、開業に向け邁進するだけである。

しかし、当時は今ほど医院開業についての情報は集めることは難しく、先輩開業医たちは皆、コンサルタントをつけて開業準備をしており、医薬品卸開業部門のコンサルタントと契約した。

医薬品卸開業コンサルは、コンサル料は無料である。しかし開業に際しての物品購入、開業時の業者の斡旋などにまつわる出費から中抜きでコンサルタント料が取られる形だ。

さらに開業後医薬品は卸業者から仕入れないといけないルールがあるため、その契約もセットである。

開業専門コンサル会社は、コンサル料100万とか、200万とかいわれるが、医薬品卸開業コンサルも、結局それくらいはマージンを払うことになるのだろう。

しかし、開業前まで勤務医として働いており、満足に開業の情報を集められない私に取っては、時間を買う、という意味合いでコンサルを通すこととなった。

また、スタッフ募集などはもちろん開業まではやったことがないため、どの業者にどのように依頼するのか、面接はどのように設定するのか、いつから募集を始めるべきか、などはコンサルタントに相当頼った。

細かい役所への申請などもすべて任せたので、その意味ではすごく楽にはなった。

しかし、例えば印刷会社や、内装業者、税理士などは自分で探して契約したので、すべてをコンサル会社経由で契約するよりは少し安くはできたかとは思う。

少し余談になるが、コンサルタントを契約する際は、開業後も付き合いのある業種の方がいいと、個人的には思っている。

具体的には、医薬品卸、会計事務所などがよいと思っている。

もちろん、私の開業当時より今は医院開業情報が集めやすいし、時間があるのならすべて自分でやると相当安く上がるだろうと思うが、その時間と労力が取れないなら、コンサルタントを使うのは一つの方法だと思う。

開業直前に職員が辞める


そして、開業数ヶ月前、スタッフ面接を行った。

もちろん面接される側になったことはあっても、面接する側になったことはないため、おそらく応募者より私の方が緊張していただろうと思う。

コンサルタントにも立ち会ってもらったのだが、彼はもちろん慣れているため、応募者は私より貫禄のあるコンサルタントが院長だと思い込み、そちらにアピールする人が続出してやや落ち込んだ。

そしてスタッフも決まり、開業2週間前より研修を開始、電子カルテの使い方などの勉強が始まった。


ここでまた問題が発生した。

開業まであと3日という時に、一人のスタッフが退職希望を申し出てきた。

「やっぱり私には合わない気がします。」

人事の洗礼を開業前に早速受けることとなった。

今考えると、こうなった理由は2点あり、1点は以前私がTwitterで述べていた

「院長の未熟さ」であり、もう1点は、数人のうち1名は「少し個性的だが一人くらい違う雰囲気の明るい人を採用するのもよいか」と考えて採用したことが裏目に出た、という点だ。

特に開業当初のこちらにも余裕がない状況では、極力スタッフ間の軋轢がないよう、無難な人選をすべきで、あえて揉め事が起きそうな、雰囲気の違う人が混在しないようにした方が良いと思う。

そして、もともとそれほど多くの人数を採用していなかったので、一人少ないだけでもかなり運用に支障がでるため大変動揺した。何とかして人を確保しないと、他の職員の士気も落ち、辞める職員も出そうな雰囲気だった。


そこで、次点で不採用とした方に連絡し、来てもらえないかとお願いしてみた。

すると喜んで「入りたいです!」と言ってくれたため、非常に助かった。

ところで、採用豆知識だが、こういったことは時々起きるので、残念ながら迷って不採用にしたとしても、後で連絡できるような準備はしておいて損はないと思う。

そして、その新しく採用したスタッフは、非常に優秀で、結局結婚退職するまで5年以上勤務してくれ、本当に助かった。

面接時は、実直そうだが少し暗いかな、という印象で不採用とした人だったのだが、実際勤務しだすと非常に明るく、人望もあった。

面接時は緊張により普段の明朗さは出せない人がいる、ということを学んだ。

内覧会、初日。泣きそうになる

そして開業日前日の、内覧会の日を迎えた。

90名程度の来院者があった。

非常にホッとした記憶がある。

そして開業当日朝、診療開始の前にすでに数人の列ができていた。

正直かなり緊張した。

ちゃんとオペレーションを回せるだろうか。

そして一人目の診察が始まった。

その時、「あ、私はこれをしたかったんだ」という、少しグッとくる泣きそうな感情が出てくるのを感じた。


その瞬間の私は、どういう心境だったのか。

勤務病院を退職し、開業準備に専念している約2ヶ月、医業は全くせず、業者との折衝、値切り交渉、看板の確認、採用面接と、経営者としての業務のみしていた。

そういった仕事は嫌いではないのだが、準備が長くなってくると時折「私は一体今なにをやっているのだろう」という、何とも言えない不安、焦燥、虚しさを感じる瞬間があった。

医療と離れていることでこれほど不安な気持ちが出るとは思ってもみなかった。

開業準備は、今までやったことがない仕事ばかりだし、そもそも患者が来てくれるという保証も全くない中で、まさに暗闇で手探りで壁に当たりながら必死でやっていた。

なので、初日に診察が始まった時、患者が来てくれたことに感謝と、「これをするためにこの数ヶ月しんどい思いをしていたのだ」という思いとで、まさに感無量といえる感情になったのだった。

そして初日は30人を超える来院があり、喜びと同時にホッとする気持ちとなった。

それからは患者は来ない。。

しかし盛況だったのは初日だけで、翌日からの患者数は激減した。

0人ということはなかったが、午後から一桁、10人超えるとホッとする、そういう日々が続いた。

耳鼻科は、単価が安いため、1日20人程度では赤字で、借金の返済をしてしまうと私の給料は出ないくらいである。

患者が来ないので、院内はBGMだけがこだましている。

「ジブリ・オルゴール」をかけていたのだが、曲の順番を記憶するくらいになった。

今でもオルゴール版の「となりのトトロ」を聞くと、何だか胸が苦しくなる。

患者が来ないと医院は静かなので、私のいる診察室に、受付の自動ドアの開閉の音が聞こえる。

そして、自動ドアが開く音が聞こえると、「あ!患者が来たのか!」と思うのだが、

その後「佐○急便です!」が聞こえると、「あぁ、違ったかー」とガックリする。

そんな風にして、3ヶ月、それほど患者数が伸びずに日が過ぎていった。

スタッフから「あれ、院長はだんだん患者さん増えてくるって言ってたのに??」という感じが、言葉には出さないがひしひしと伝わるようになってきた。

そして開業4ヶ月目、ついになぜか平均患者数が前月より減ってしまった。

心の中はまさに冬の嵐だ。正直診察室の椅子に座っているのが苦しくなってきた。

しかしこの私の心の動揺をスタッフに見せるわけにはいかない。

「このままでだいじょうぶなのかな。。」という心持ちだと思われるスタッフに対し、

「今年は暖冬だから、患者もきっと健康なんだよ。寒くなってきたらみんな風邪ひいたりして来てくれるようになるよ、他の先生もそう言っていた」と、根拠の全くない強がりを言って彼女らを鼓舞していた。

本当の所は、自分に言い聞かせるために。


しかし落ち込んで患者を待っているだけではダメだと思い、医院のビラを配ることにした。

休診日に、まずはポスティングだと考え、妻と一緒に多量のビラを抱えて医院近隣のマンションに向かった。

だが、ここで事件が発生した。。

長くなってきたので、また次回に。。

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